跌蹶 手指臂腫 転筋 陰狐疝 蚘蟲病証治 第十九
跌蹶 手指臂腫 転筋 陰狐疝 蚘蟲病証治 第十九
1条 師曰く跌蹶を病み其の人但能く進み却く能わざるは、ゼン二寸入るを刺せ、これ太陽の経傷るるなり。
病人常に手指臂腫するを以て動じ、この人身体瞤瞤する者は藜蘆甘草湯これを主どる。
りろ藜蘆甘草湯の方 未見 …しゅろ草の根 辛寒 鬱滞する熱を散ずる
跌蹶を病み前に進むことは出来るが後しざり出来ない場合其の病人は太陽経脈が障害され はい腸筋の拘攣によるものである、ゼン入二寸の穴を刺せ。病人が陽気が乏しく常に末梢の手指 前搏が腫れ蒸泄が阻害され熱が鬱滞するために経脈を動じ体中筋肉がピクピク痙攣するものは藜蘆甘草湯の主治である。
2条 転筋の病為るその人臂脚直し脈上下行し微弦、転筋腹に入る者は鶏屎白散これを主どる
鶏屎白散の方
鶏屎白 鹹微寒 膀胱筋の攣急を去り尿不利、遺溺を治す 入膀胱経
右一味散と為し方寸匕を取り水六合を以て和し温服す。
転筋の病証は前搏 脚が拘攣し脈は三部とも真っ直ぐで微弦、拘攣が少腹に及び尿不利、遺尿する場合は鶏屎白散の主治である。… 膀胱熱、尿利異常を伴う
3条 陰狐疝気の者は偏りて小大有り時々上下す、蜘蛛散これを主どる。
蜘蛛散の方
蜘蛛 桂枝
右二味散と為し八分の一匕を取り飲に和し服す、日に再服す、蜜丸 も亦可。
陰狐疝気「鼠蹊ヘルニア」の病証は左右の睾丸が均等でなく小大が有り時々中に入ったりでたりする。蜘蛛散の主治である。
4条 問うて曰く腹痛を病み虫有るはその脈何を以てこれを別つか。師曰く腹中痛むはその脈当に沈若しくは弦なるべきに反って洪大なるは故に蚘虫有り。
腹中痛は胃気不通によるもので当然脈は沈若しくは弦の筈であるのに反って陽気過盛の洪大の脈を現す場合は陰気が抑えられるためでそれは蚘虫がいるからである。
5条 蚘虫の病為る人をして吐涎し心痛発作時あらしむ毒薬にて止まざるは甘草粉蜜湯これを主どる。(吐涎は胃の虚寒で胃が収縮する為、本条は回虫の刺激による)
甘草粉蜜湯の方
甘草 粉「米粉」一両重は少し重い 蜜
右三味水三升を以て先ず甘草を煮て二升を取り滓を去り粉、蜜を内れ撹ぜて和せしめ 煎じて薄粥の如くし一升を温服す、差ゆれば即ち止む。
蚘虫症の病証は生唾が上がって心臓部が痛みその発作が時をおいて起こる、駆虫薬を用いて痛みが止まない場合は甘草粉蜜湯の主治である。胸中にある幼虫を胃中に惹く。
6条 蚘厥の者は当に蚘を吐すべし、病者静にして而して復た時に煩せしむるはこれ蔵寒(脾を指す)と為す、蚘上りて膈に入る故に煩し須臾にして復た止む、食を得而して嘔し又煩する者は蚘食臭を聞いて出ず、その人当に自ら蚘を吐すべし、蚘厥の者は烏梅丸これを主どる。 …厥陰13条 有機酸で整腸
烏梅丸の方
烏梅 細辛 乾姜 黄連 当帰 附子 川椒 桂枝 人参 黄檗
右十味異に搗き篩い合わせてこれを治す、苦酒を以て烏梅を漬け一 宿し核を去りこれ を五升米下に蒸し飯熟し擣き泥と成し薬を和し 相得しめ臼中に内れ 蜜と杵づき二千下し梧子大の如くに丸し食に 先立ち十丸を飲服す、日に三服し稍や加 え二十丸に至る、 生冷 滑臭等の食を禁ず。
蚘厥(蚘虫症のため消化器障害を起こし栄養が悪く貧血して手足が冷える)の場合は当然蚘虫を吐く筈である、「病人が安静になったかと思うと復た時をおいて心煩するのは脾寒し胃気滞るものでこれは蔵寒である」、蚘厥は脾気が減衰し栄養が悪くなるので蚘虫が這い出し胸中に入るので心煩し蚘虫が静かになると心煩も止むのである、食べた後吐き気がし又心煩する場合は虫が食べ物の匂いを嗅ぎつけて出てくるのである、だから病人は蚘虫を吐く筈である、蚘厥の場合は烏梅丸の主治である。
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