辨厥陰病脈証并治第十二

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辨厥陰病脈証并治第十二 解説

下焦に陽気厥け上熱下寒し陰陽交わらず津液を巡らすことが出来なくなっている 陽虚陰実、陰陽勝復、陰陽否格(上熱下寒)

1条 厥陰の病たる消渇し気上って心を衝き心中疼熱し飢え而して食を欲せず食すれば即ち蚘を吐しこれを下せば止むをわず。
…厥陰1条、(『素問』奇病論47)

厥陰病は下焦に陽気厥け体液巡らず上熱下寒して激しい渇を現し肺熱欝滞し肺循環滞り心臓に衝きあげる様な異常感と胸中に疼く様な熱感を伴い体液を補充しようとする為、空腹感を覚えるが既に脾胃の機能は衰えているので食べられず無理に食べると直ぐに吐き脾胃虚寒のため蛔虫がいる場合は食を求めて胃に集まるので蚘虫も一緒に吐く様になる、胃腸の機能は衰えているので不大便が続く場合もあるがこれを下すと上熱脾胃虚寒のため下利が止まなくなる。
…(1)脾胃虚寒の消渇でそれ程飲めずしきりに渇く

2条 厥陰中風 脈微浮なるは愈えんと欲すと為す、浮ならざるは未だ愈えずと為す。

厥陰中風は元陽虚し血中に津液乏しく心気衰えた者が風を被り衛気を損じたもので浮虚而尺脉濇で表熱し手足先は冷える、今寸脈微で尺脉が微浮に成ってきた場合は寒緩み下焦に陽気を増し衛気回復の兆であるから治癒に向かっているのである、浮にならない場合は未だ治癒の段階に至ってはいないのである。(脉微浮は少陰中風の陽微陰浮と同じ)
…桂枝加附子湯 太陰2条(太陰中風)少陰10条参照(少陰中風)

3条 厥陰病解せんと欲するの時は寅より卯の上に至る。

厥陰病が治癒に向かう時刻は午前二時から六時脈気の旺盛になる時である。

4条 厥陰病渇して水を飲まんと欲する者は少々之れを与えれば愈ゆ。

厥陰病の消渇は胃中虚冷があり血中の津液が補えないのであるから渇しても飲む事が出来ない筈である、水を欲しがり其れが胃に治まる場合は胃気回復し胃中乾くに因るのであるから胃を損なわない様に少しずつ与えて胃中を潤せば陰陽和し病は治癒する。

5条 諸の四逆厥する者は之れを下すべからず、虚家亦然り。
… 少陰42条(急ぎ下せ)
全て四肢が逆して冷え上がる場合には多くは少陰病か厥陰病である、大便不利が有っても裏気虚するに因る、下してはならない、体力消耗の著るしい者も同様である。

6条 傷寒先に厥し後発熱し而して利する者は必ず自ら止む、厥を見わすは復た利す。

傷寒で先に手足が冷えていた者がその後発熱しその上下利が始まった場合は胃気が回復してきたもので下利も寒が去ればひとりでに止まるが発熱の後再び厥を現す場合は復下利する。

7条 傷寒始めに発熱する事六日厥する事反って九日而して利す、凡そ厥利する者は当に食する能わざるべし、今反って能く食する者は恐らくは除中と為す、食するに索餅を以てし発熱せざる者は胃気尚在るを知る必ず愈ゆ、恐らくは暴熱来り出で而して復た去る也、後三日に之れを脈し其の熱続いて在る者は之れを期するに旦日夜半に愈ゆ、然る所以の者は本と発熱六日厥する事反って九日復た発熱する事三日、前六日に并せて亦九日と為す、厥と相応ず故に之れを期するに旦日夜半に愈ゆ、後三日に之れを脈し而して脈数其の熱罷まざる者は此れ熱気の有余と為す、必ず廱膿を発する也。

傷寒を病み其の病状は当初六日間発熱が続き其の後厥冷し寒の病証が反って多く九日間続きそして下利をした、凡そ厥冷の時は脾胃の働きは低下しているのだから当然食べられない筈であるが今病人は反って良く食べる場合此れは体内の正気は著るしく減衰し本能的に食して補なおうとする除中であるかも知れない、此の時は脾胃は殆ど働かなくなっている筈だから索餅を食べさせてみて発熱しない場合は(暴熱せず微発熱)胃気を回復し裏気は通じている事が判る、必ず治癒する、然し恐らくは除中なれば一時的に暴熱を発し胃気衰竭し食を得て残陽発露し浮散するのだから陽気が去れば熱は去ってしまうのである、(微に発熱し)脈が陽脈の儘で発熱が三日後も続く場合には経過を予想して翌日の夜半に治癒する、其れは前に発熱の期間が六日続き其の後厥冷が九日であったが其れが又三日発熱し前の六日と併せて発熱の期間が九日に成り厥冷の期間と同じであるから陽気が回復したことを意味する、それで翌日夜半に治癒することが判る…脈気の回復する時刻に…、若し治癒せず更に三日しても熱が下がらず脈数が除かれない場合は陰気の回復が伴わず熱気の籠りが多すぎたのであり多くは腫れ物を生じる。

8条 傷寒脈遅六七日而して反って黄芩湯を与え其の熱を徹す、脈遅は寒と為す。今、黄芩湯を与え復た其の熱を除けば腹中応に冷ゆるに応ず当に食する能わざるべし、今反って能く食するは此れ除中と名づく必ず死す。

傷寒脈遅六七日下利は発熱が有っても裏寒外熱である、黄芩湯は太陽と少陽の合病下利で邪が少陽に在り表裏 気不通による熱利であり肺熱を冷まし表裏を通じ熱の滞りを除く方剤であるから此の場合に黄芩湯を与えると胃気を損なってしまう事になり冷えてしまって食べることが出来なくなる筈である、ところが反って能く食べる場合は除中と言って死証である。…脾虚寒に因る黄芩湯類証

9条 傷寒先に厥し後発熱し下利するは必ず自ら止む、而して反って汗出で咽中痛む者は其の喉 痺を為す、発熱し汗無く而して利するは必ず自ら止む、若し止まざれば必ず膿血を便す、膿血を便する者は其の喉 痺せず。…陽負 陰負

傷寒に罹り先に厥冷を現し其の後発熱し下利する場合は陽気の回復に因る者で胃中の停滞が除かれれば必ず自然に下利は止まる、ところが発熱し下利止み反って汗が出 喉が左右倶に痛む場合は(寒去らず)亡陽し胸中に熱が鬱滞したもので喉が腫れて塞がる、
…血中の津液を潤し血熱を冷ますに黄連阿膠湯を用い半夏苦酒湯で治する…発熱し汗無くそして下利する場合は邪除かれ陽気回復するものである、胃中の停滞が除かれ陰陽和すれば下利は自然に止むのである、若し下利が止まらない場合は過陽で下に暴発したもので胃中の津液を失い腸壁に炎症を生じて必ず粘血を便する様に成る(白頭翁湯)この場合は下焦から邪熱を利しているのであるから喉痺を起こすことはない。

10条 傷寒一二日より四五日に至り而して厥する者は必ず発熱す、前に熱する者は後必ず厥す、厥深き者は熱も亦深く厥微なる者は熱も亦微、厥し之れを下すに応ずるを而して反って汗を発する者は必ず口傷れ爛れて赤し。…寒厥と熱厥(25条参照)

傷寒に罹り一二日から四五日目になって厥冷が現れた場合は陽気衰え少陰が寒邪を受けたもので陽気が回復して来ると邪は表に押し戻されて必ず発熱を現す、先に熱証を現す場合は比較的陽気の衰えが少ないのであるが発散に因り陽気が衰えると寒邪は再び下焦に入り後必ず厥冷を現す(寒厥)、そして邪が劇しく厥冷が甚だしければ発熱も甚だしく邪が弱く厥冷が軽微であれば発熱も亦軽微である、胃気が塞がれた為に厥の証を現す場合には(少陰40条 42条参照 熱厥)下さなければならないが陰虚熱を発したものを誤って発汗させた場合は更に陰気を亡ぼし血熱を増し口瘡を生じて赤く爛れる。1

11条 傷寒の病 厥すること五日熱も亦五日なれば設し六日に当に復た厥すべきも厥せざる者は自ら愈ゆ、厥終わるに五日を過ぎず熱五日なるを以ての故に自ら愈ゆるを知る。  …厥陰の陰陽勝復

傷寒の病で厥冷が五日発熱も亦五日続く時は六日目には再び厥冷が現れる筈であるが若し厥冷が現れない時は陽気が回復しているのであるから自然に治癒する、厥冷の日数が五日で終りそれに対して発熱の日数も五日で陰陽過不足が補われているので治法を加えなくても自然に治癒することが判るのである。

12条 凡そ厥なる者は陰陽の気相順接せず便ち厥を為す、厥なる者は手足逆冷す是れ也。

すべて厥を現す場合は陽気と陰気が伴わず其の為に厥冷を起こすのである、厥の証は手足先から冷え上がって来る是の病証を言うのである。

13条 傷寒脈微而して厥し七八日に至り膚冷す、其の人躁し暫くも安き時無き者は此れ蔵厥と為す、蚘厥と為すに非ざる也、蚘厥の者は其の人当に蚘を吐すべし、病者静かにして而して復た時に煩せしむるは此れ蔵寒と為す、蚘上って膈に入る故に煩し須臾にして復た止む、食を得て而して嘔し又煩する者は蚘 食臭を聞きて出で其の人自らを吐す、蚘厥の者は烏梅円之れを主どる、又久利を主どるの方。…金匱蚘虫7条

烏梅円の方
烏梅 酸平30個 細辛6 辛温 乾姜10 辛温 黄連16 苦寒 当帰4 甘温 附子6 辛温 蜀椒4 辛温腹中を温める 桂枝6 辛温 人参6 甘微寒 黄蘗6 苦寒下焦の湿熱
右十味別に搗き篩い合せて之れを治め苦酒を以て烏梅を漬けて一宿し核を去り之れを五升の米と下に蒸し飯熟し梼いて泥に成し薬を和し相得しめ臼中に内れ蜜と杵くこと二千下、梧桐子大に丸し食に先だち十円を飲服す、日に三服し稍や加え二十円に至る、生冷滑物臭食等を禁ず。

傷寒で脈は微で手足先から冷え上がり其れが七八日続いて肌が全体に冷たくなる、病人
は悶え少しの間も安静にしていられない場合は(血熱の証)此れを蔵厥と言って元陽が衰え津液が巡らなくなり五蔵の陽気が衰微したもので通脈四逆湯の主治である、蛔虫症で貧血の為に手足が冷える則ち蚘厥ではない、蚘厥の場合は当然蚘虫を吐く筈である、病人が安静であるが復た時を置いて心煩が起こり繰り返す、此の場合にも蚘厥と病証が類似するが蚘を吐さない場合は脾虚寒し胃気滞るもので蔵寒である(甘草乾姜湯、四逆湯)、蚘厥の場合は栄養がないので蚘虫が這い上がってきて胸中に入るので其の時に心煩し蚘虫が静かになると心煩も止むのである、物を食べた後吐き気がし心煩が再び現れるのは蚘虫が食べ物の匂いを嗅ぎ付けて胸中から這い出して来るので病人は蚘虫を吐くのである、蚘厥の場合には烏梅円の主治である、又下利が長く止まず栄養状態が悪く成り貧血して厥を現す場合にも主治する。

14条 傷寒熱少なく厥も微、指頭寒え黙々食を欲せず煩躁すること数日、小便利し色白き者は此れ熱除く也、食を得んと欲するは其の病愈ゆると為す、若し厥し而して嘔し胸脇煩満する者は其の後必ず血を便す。…太陽下21条(微陽結)、少陽6条(陽から陰に移る)、厥陰9条(便膿血)参照

傷寒で病証は発熱は少なく厥冷も僅かで指先が冷え鬱々と黙した儘食も欲しがらず煩躁の証が数日続いている、此の場合少陽に熱が結し表気昇せず裏気下らず少陽病で血熱を生じた場合と脾虚寒して胃気結し下焦に陽気厥け津液巡らず厥陰病で上熱下寒する場合がありよく似ているが今の場合は厥も微で尿色は濃い筈で表気昇せず指頭寒え黙々食を欲せず煩躁は少陽柴胡の証である…小柴胡湯…、小便が利する様に成り尿色も薄く成った場合は熱が除かれたのである、食欲が出てきたら病は治癒したのである、ところが若し煩躁数日、後厥し吐き気が有り胸脇が苦しく脹満する場合は厥陰の陰陽否格で上焦熱し下焦寒え下利止まず陰気を失って陽勝り後には必ず膿血を便する、(白頭翁湯)。…陰負陽勝して熱利になる。

15条 病者手足厥冷し我結胸せず小腹満すと言う、之れを按じて痛む者は之れ冷結んで膀胱関元に在る也。

病人の(厥陰病の正証ではない)手足が厥冷し舌上燥き心下部硬満し煩躁し結胸状であるが当人は心下部でなく下腹部の脹満感を訴え(畜血ならば手足煩熱)病状は蔵結に似ているが下腹を按じて痛む場合は膀胱に寒水が停滞し冷結んで下焦関元に在るもので、少腹関元に冷結び陰位に陽気厥する厥陰病の陰陽否格の病証に類する、…附子湯、真附湯、四逆湯等から撰用する。膀胱寒し機能低下(弁証治療学)脾気結し胃気不通 当帰四逆加呉姜湯

16条 傷寒発熱四日厥すること反って三日、復た熱すること四日、厥少なく熱多きは其の病当に愈ゆべし、四日より七日に至り熱除かざる者は其の後必ず膿血を便す。

傷寒で始めに発熱が四日続き其の後厥と利が三日続き再び熱が四日続いた、(陽気回復し体液充ちて邪熱表に追われ発熱する、陽気が通じる)厥冷の期間が少なく発熱の期間が多ければ陽気が回復しているのであるから病は当然治癒する筈であるが其れが四日から七日熱が続いて除かれない場合は陰虚甚だしく陽勝陰負して血熱を生じ熱利し後に必ず膿血を便する様になる、
…白頭翁湯…。

17条 傷寒厥すること四日 熱すること三日復た厥すること五日なれば其の病進むと為す、寒多く熱少なきは陽気退く故に進むと為す也。

傷寒で厥利が四日続きその後利止み発熱が三日で復た厥利が今度は五日続く時は病勢は進行しているのである、寒の証が期間が長く熱の証の期間が短いのは正気が減衰し病勢が進んでいるのである。

18条 傷寒六七日 脈微手足厥冷し煩燥するは厥陰に灸す、厥還らざる者は死す。

傷寒六七日に至り恐らくは陰陽勝復したものが脈微になり手足が厥冷し煩燥するのは元陽減衰し津液が巡らなくなったもので通脈四逆湯の主治である、厥陰経脈上に灸し正気を救わねばならない「気海、関元は任脈穴であるが気の会合するところで此に灸する」、それでも陽気が戻らず厥が除かれ無い場合は陽気亡びたのであり死証である。

19条 傷寒発熱下利厥逆し躁して臥するを得ざる者は死す。少陰20条参照

傷寒で発熱下利厥逆し手足をバタバタさせてもがき安静に横臥していられない場合は脾胃虚寒し元陽竭きて陽離散(陽外に格す)の発熱で四逆湯の主治であるが既に陽気竭き死証である。

20条 傷寒発熱し下利至って甚だしく厥止まざる者は死す。

傷寒発熱し下利は傾ける様に至って激しく手足の厥冷が止まない場合は已に胃気衰微し腎気碣き陰虚熱を発しているのである、四逆湯を与え厥が除かれない場合は陽陰倶に碣きた者で死証である。 …前条に同じく表裏関格の証

21条 傷寒六七日利せず、便ち発熱し而して利し其の人汗を出だし止まざる者は死す 、陰あるも陽無き故也。

厥陰病で厥すれば下利する筈なのに下利しないのは己に胃気途絶えたのであり六七日経過しそれから発熱してきて下利が始まり病人はビッショリ汗をかき止まらないのは下焦に陽気途絶え下焦闔せず…筋肉弛緩し腸管の停滞物が流れ出る…下利が始まり、陽気散じ表熱裏寒するに因り発熱し汗は亡陽の脱汗である、此の場合は正気竭き死陰だけになっているのであり死証である。

22条 傷寒五六日結胸せず腹濡かく脈虚し復た厥する者は下すべからず、此れ亡血と為す、之れを下せば死す。…上熱下寒し胃氣虚の不大便  (厥陰15条参照)

傷寒先厥し後発熱して下利止み(6条参照)五六日を経過し心下満 舌燥などの熱証を現すが心下は按じて痛まず濡らかで結胸せず脈は虚し痞でもなく陥胸湯、瀉心湯を与える証ではない、発熱の後再び厥冷を現し不大便の場合は胃氣が回復したのではなく循環傷害による厥で不大便は胃氣の滞りであるから下してはならない…四逆加人参湯…、此れは胃氣乏しく体液を損じて亡血し胸膈に熱滞り心気虚し上熱下寒するもので邪熱が内陷したのではないこれを下せば更に胃気を亡ぼし救うことが出来なくなる。

23条 発熱し而して厥すること七日、下利する者は難治と為す。

発熱と厥冷を併せ七日を経過し下利し始めたのは陰陽否格の証(18.19.20条参照)で、七日は経を尽くし陽気を回復する日数であるが逆に胃気衰えたのである、難治である。

24条 傷寒脈促 手足厥逆する者は之れを灸すべし。太陽上22、辨脈13条参照

傷寒脈促は表寒に因り陽気が伸びられずオーバーヒートする為であるが、手足厥逆を伴うのは下焦に寒甚だしく陽気離散に至ろうとしているのである、四逆加人参湯を用い気海関元に灸し陽気を援けるが宜しい。…胸膈に陽気結し下焦に巡らざるに因る厥(厥陰12条 厥)

25条 傷寒脈滑而して厥する者は裏に熱有る也、白虎湯之れを主どる。

(太陽下47条 表に熱有り裏に寒有りに対比し少陰の府膀胱)厥陰10条(寒厥、熱厥)滑脉(辨脈25条)(裏が胃中を指すなら方剤は承気湯になる筈)

傷寒脈滑而厥は熱厥で陽気は強いが寒邪が劇しく胃氣結し下焦に陽気が竭して腎水巡らず血中に熱が伏するに因る厥である、手足心は熱く小便赤渋し手足厥冷する、此れは寒邪が劇しく陽気内陥して胃氣結し下焦に陰気竭し膀胱に熱が入り伏熱を生じたのである、此の時は白虎湯で陰気を援け胃気を通じる、主治薬である。   …熱厥、寒厥は(素)厥論45参照 滑脈は血中熱に因る

26条 手足厥し寒し脈細 絶せんと欲する者は当帰四逆湯之れを主どる。
…胃気虚に表寒が加わり表氣不通 不可下23条は(脾胃虚寒し、陽気散じ裏気滞る)何れも脾胃を補い表を援けて表裏を救う

当帰四逆湯の方
当帰3 桂枝3 芍薬3 細辛2 大棗8 甘草2 通草2 辛平裏気乏しきによる尿不利
右七味水八升を以て煮て三升を取り滓を去り温めて一升を服す、日に三服す。

傷寒で手足厥冷して寒がり脈細で今にも途絶えそうであるが此の場合は陽気が途絶えようとしているはなく脾胃虚するに因り血虚し陽気乏しく寒を受け邪表に留まり表気滞るもので陽気満ちれば通じ厥陰の陰陽勝復に似た証を現す、表気を援け脾胃を補い表裏を救えば尿利し寒水去り栄衛巡る、当帰四逆湯の主治である。

27条 若し其の人内に久寒ある者は宜しく当帰四逆加呉茱萸生姜湯之れを主どるべし。

手足が厥冷し寒さを訴え脈が細で今にも途絶えそうで脾胃が久しく冷え下利嘔などの証が有るときは中虚が病因呉茱萸、生姜を加え当帰四逆加呉茱萸生姜湯の主治である。

28条 大いに汗出で熱去らず内拘急し四肢疼み、又は下利厥逆し而して悪寒する者は四逆湯之れを主どる。
…太陽上29、30、太陽中65、陽明47条(先救裏)

裏虚外熱を誤って発汗させ大量に汗が出て熱が除かれず腹直筋が拘急し手足が疼む場合は平素脾胃弱く栄衛乏しい者を大量に発汗させ亡陽せしめたのであり、又大量に汗が出、下利厥逆し悪寒する場合は下焦に寒があり胃気を亡ぼしたものである、何れの場合にも証は表裏に亘るが先ず胃気を救い下焦の陽気を救わねばならない、四逆湯の主治である。

29条 大いに汗し若しくは大いに下利し而して厥冷する者は四逆湯之れを主どる。

大量に汗が出或いは甚だしく下利し其の挙げ句に手足が厥冷する場合は何れも陽気が衰えたのであり何れも四逆湯の主治である。(裏寒外熱を発汗或いは下す)
…此の条も先救裏である。

30条 病人手足厥冷し脈乍ち緊なる者は邪結して胸中に在り、心中満し而して煩し飢えて食を欲せざる者は病胸中に在り、当に須らく之れを吐すべし、瓜蒂散に宜し。
…少陰44(脈弦遅、胸中実)、可吐5条(脈乍ち結す)

病人が手足が冷たくなって脈が急に緊になった場合は…少陰病や厥陰病なら厥冷が現れた時は沈微細の筈である…病邪(寒邪)が胸中に結し肺循環に鬱滞を生じ熱実したのである、又胸中満して心煩し空腹感があるのに食べられないと言った病証を現す場合は手足に厥冷が有っても少陰病の下焦陽虚に因るものでなく厥陰病の陰陽否格によるのでもなく胸中に陽気阻まれ胃気が通じないのである、…脈沈微でなく弦遅の筈である…此の場合は当然吐法を用いるべきである、瓜蒂散を用いるのが宜しい。

31条 傷寒厥し而して心下悸する者は宜しく先ず水を治す可し、当に茯苓甘草湯を服し却りて其の厥を治すべし、爾らずんば水漬して胃に入り必ず利を作す也。
…厥と心下悸 汗後の陽虚は両治 太陽中34(桂枝4甘草湯)43(茯苓2甘草湯)55条(真附湯)

傷寒に罹り手足冷えは陰病であるが心下悸する場合は元もと胃気虚し胃内停水がある者が寒を被り更に陽気虚したもので先ず茯苓甘草湯を服し陽気虚の原因である停水を除き胃気を回復しその後でなお厥があれば胃氣を援けて厥を除く、そうでなければ胃気弱い為に水の停滞を増し胃が水浸しになれば下利になるのである。甘草乾姜湯或いは四逆湯

32条 傷寒六七日大いに下して後寸脈沈而して遅、手足厥逆し下部の脈至らず咽喉利せず膿血を唾し泄利止まざる者は治し難しと為す、麻黄升麻湯之れを主どる。

麻黄升麻湯の方
麻黄2.5 升麻 苦平陽明経脈の熱の鬱滞を除く 当帰各1.25 知母 苦寒陰虚血熱  黄芩 葳蕤 甘平胃気を補う各0.75 石膏 白朮 乾姜 芍薬 天門冬 苦平
麦門冬 に比べより熱に 比重 桂枝 茯苓 甘草各0.25
右十四味水一斗を以て先に麻黄を煮て一両沸し上沫を去り諸薬を内れ煮て三升を取り滓を去り分かち温め三服す、相去ること三斗米を炊しぐ頃おいの如く「四十分位の間隔」
尽くさしめ汗出でて愈ゆ。

傷寒で六七日を経過し発熱不大便を見て之れを大下し胃気を損じ、陽気内陥して寸脈は沈遅になり手足が厥逆し関脈尺脉は殆ど触れず胃気衰微して上熱下寒し呼吸で熱気をはくようになるので咽喉は痰が絡み通りが悪く炎症を起こして膿血痰を唾し裏気通じ図チビリチビリ絶えず下利する場合は誤って大下した為に胃気衰微したもので、表裏内外を調えるには麻黄升麻湯の主治であるがこうなると難治である。…下厥上竭

33条 傷寒四五日 腹中痛み若しくは転気下って少腹に趣く者は此れ自利せんと欲する也。
(下利の前兆を云う、寒熱を辨ずべし)

傷寒四五日して脾胃分争し腹中痛み若しくは腸鳴がしてそれが下腹に下る場合は元もと胃虚し停水が有り下焦に寒を被り胃気塞がれていたものが胃気を増し邪氣を抑えて下に向かい或いは胃氣衰え下利になろうとしているのである、寒なら人参湯、熱なら黄芩湯が宜しい。

34条 傷寒本と自ら寒下するを医復た之れを吐下し寒 格して更に逆して吐下す、若し食口に入れば即ち吐するは乾姜黄連黄芩人参湯之れを主どる。

乾姜黄連黄芩人参湯の方
乾姜3.0 黄連3.0 黄芩 人参各3.0  …吐に因って胃中乾く
右四味水六升を以て煮て二升を取り滓を去り分かち温めて再服す。

元もと脾胃に虚寒が在り胃気弱く寒下する者が傷寒に罹り胸膈に熱が入り心下満したものを宿食或いは上焦熱実と誤って更に吐下させた為に脾寒格して胃気交らず…脾胃の機能が停止し…一層逆して吐き下しするようになった、若し食べると直ぐに吐く場合は膈中に熱が滞り裏気下らず胃が食べ物を受け入れなくなった胃中に虚寒があるのである、乾姜黄連黄芩人参湯の主治である。

35条 下利し微に熱有り而して渇し脈弱き者は自ら愈えしむ。金匱下利30条

厥陰下利は寒の証であるが大熱でなく微に熱が有り喉が渇き脈が弱い場合は邪気去り胃気回復の兆であり陰陽が調和すれば自然に治癒するのである。

36条 下利し脈数 微に熱有り汗出るは自ら愈えしむ、設し復って緊なるは未だ解せずと為す。…金匱吐下28条同文

厥陰病で下利しているとき脈が数で弱、微に熱が有り汗が出る時は胃気回復に向かうも衛氣弱く表に熱が滞るのであるが陰気の不足は無いので自然に陽気の回復を待つのが宜しい、ところがかりに脈が緊で熱有り汗が出る場合は裏寒外熱し亡陽であるから元陽を救わねばならない。

37条 下利し手足厥冷し脈無き者は之れを灸す、温まらず若し脈還らず反って微喘する者は死す。金匱吐下26条同文

厥利で脈が触れない場合は通脈四逆湯を与え「少陰37条」灸法を用いて…関元、気海 …薬力を援けよ、若しそれでも手足の冷えが除かれず脈が現れないで反って微喘する場合は陽気衰微し肺気衰えているのであって死証である。

38条 少陰、趺陽に負くる者は順と為す也。金匱吐下26条

太谿の脈は腎気を侯い衝陽の脈は胃気を侯う、腎気穏微にして胃気顕著を順とする、下利の時に順を現す場合は胃氣未だ衰えず病は浅く之れを(病の)順とする、逆に胃気弱く腎脈に負ける場合は胃氣(陽気)衰え陰氣(腎氣)が勝り之れを(病の)逆とする。

39条 下利し寸脈反って浮数、尺中自らなる者は必ず膿血を清す。金匱吐下32条

下利の脈は沈微である、ところが寸脈浮数、尺脉濇は下焦の陰気虚、脾気虚し津液巡らず表に熱が滞る、脾虚表熱である、胃熱滞り後必ず粘血を便するようになる。 …白頭翁湯、

40条 下利清穀するは表を攻めるべからず汗を出だせば必ず脹満す。
… 金匱33条(同文) 陽明47条(浮而遅不可攻表) 太陽中36条(発汗後の腹脹満)下利で発汗させる場合 太陽中2(合病葛根湯)、4条(協熱利葛根黄連黄芩湯)  太陽下34(協熱利桂枝人参湯) 太陰4(桂枝湯) 厥陰32条(麻黄升麻湯)参照

下利清穀は虚寒の証、表証が有っても裏寒に因り陽気巡らない為で先に裏を温めなければならない…四逆湯、此の場合発汗させると裏気を損ない腹脹満を起こす。…先救裏

41条 下利し脈沈弦の者は下重する也、脈大の者は未だ止まずと為す、脈微弱数の者は自ら止まんと欲すと為す発熱すと雖も死せず。金匱吐下25条同文30条脉弦表証

下利で脈が沈弦の場合は胃気塞がれて滞るもので此の場合は下に暴発して熱利下重する、下利で脈が大の場合は陽明熱を現し胃熱盛んで脾胃和せず下利は未だ止まらないのである、脈が微弱数の場合は已に邪熱除かれ正気を回復しょうとしているのである、陰陽調和せず発熱することがあってもそれは一時的なもので陰気竭きたものではないからやがて快復するのである。(熱性の下利)

42条 下利し脈沈而して遅 其の人面少しく赤く身微熱有り下利清穀する者は必ず鬱冒し汗出で而して解し病人必ず微厥す、然る所以の者は其の面 陽を戴くも下虚する故也。  金匱吐下34条同文

下利し脈沈で遅は裏寒に因る、病人の面色が少し赤く身に微熱が有り不消化便を下利する場合は裏寒が甚だしく上焦に陽気が集まり上下陰陽の交流が衰えているのであるから熱が鬱滞し必ず頭がボーッとなって軽い意識の障害を起こし下焦に陽気を増し津液が巡るようになると汗が出て鬱冒は除かれるが陽気の回復は充分ではないのでその時必ず微に手足が冷える、それは戴陽の故で面色は熱色を現すが下焦には陽虚しているからである、通脈四逆湯。

43条 下利し脈数而して渇する者は自ら愈えしむ、設し差えざるは必ず膿血を清す、熱有るを以ての故也。厥陰35条 金匱吐下29条

寒性の下利で脈数で弱 喉が渇いて飲みたがる場合は胃気回復の兆で陰陽の調和が取れていないのであるから治法を用いず自然に治癒を待つのが宜しい、もし治癒せず脈数が続く場合は過陽し陰虚熱に因るもので必ず粘血を便するようになる。
…白頭翁湯、(脈微 滑脱の場合は桃花湯)。

44条 下利後脈絶し手足厥冷し晬時に脈還り手足温なる者は生く、脈還らざる者は死す。金匱吐下35条同文

下利して脈が触れなくなり手足が厥冷しそれが二時間程で脈が戻って手足が温かくなってくる場合は胃気尽きず正気回復してきたのであり救うことが出来る、通脈四逆加人参湯、脈が戻らない場合は最早胃気尽きたのであり救う事は出来ない。

45条 傷寒 下利し日に十余行、脈反って実なる者は死す。

傷寒に罹り下利が日に十余回もあるのは下焦の寒に因るのであるが脈が反って実している場合は病証と脈証がかけはなれて居り已に三焦碣き真蔵の脈を現しているもので死証である。(燃え尽きる寸前の輝きに似る)

46条 下利清穀 裏寒外熱し汗出で而して厥する者は通脈四逆湯之れを主どる。金匱吐下45条(同文)  霍8条、9条参照(類文)

下利清穀 裏寒外熱汗出では亡陽の汗で手足が厥冷する場合は元陽離散し真寒仮熱の証である、通脈四逆湯の主治である。

47条 熱利下重する者は白頭翁湯之れを主どる。金匱吐下43条

白頭翁湯の方
白頭翁2 苦温 陰虚熱による炎症下利、黄蘗 黄連 秦皮 苦微寒爛れの収斂各3 右四味水七升を以て煮て二升を取り滓を去り温め一升を服す、愈えざれば更に一升を服す。

陽勝陰負の厥陰下利、口舌乾燥し肛門に熱感を覚え渋りっ腹の者は脾虚寒し胃中潤さず体液補えず血中熱し腸壁に炎症を起こし暴発下利するもので白頭翁湯の主治である。

48条 下利し腹脹満し身体疼痛する者は先に其の裏を温め乃ち其の表を攻む、裏を温めるには四逆湯、表を攻めるには桂枝湯。金匱吐下36条同文 太陽中64条類文 厥陰40条参照、霍乱7、可発汗6条参照(吐利後身疼)

裏実表証は先表後裏であるが下利し腹脹満身体疼痛は表に熱の鬱滞があり裏は虚寒する此の場合は裏を温めて気を通じその後表を攻める、裏を温めるには四逆湯、表を攻めるには桂枝湯が宜しい。

49条 下利し水を飲まんと欲する者は熱有るを以ての故也、白頭翁湯之れを主どる。

下利止み渇する者は陽気回復の兆で愈えんと欲すであるが渇が続き下利も続く場合は血中に体液が補えず虚熱を生じた為で白頭翁湯の主治である。

50条 下利し譫語する者は燥屎有る也、小承気湯に宜し。金匱吐下41条

譫語は下利に因り血中に津液が乏しくなり血熱するのである、それは燥屎が有る為に胃気塞がれ陽気が巡らず脾気虚し下利するからで此の場合には胃の熱実による譫語ではないから燥屎を去るには大承気湯でなく小承気湯を用いるのが宜しい。

51条 下利の後更に煩し之れを按じて心下濡なる者は虚煩と為す也、梔子豉湯に宜し。金匱吐下44条 山梔子は血熱を冷ます

下利が止まった後益々心煩が甚だしく心下は按じて柔らかい場合は胃熱に因るものでなく裏気虚し胸膈に熱が入り陽気が下らないのである、梔子豉湯を用い上下を通じるのが宜しい。(胸膈に熱実する下利、虚煩は炎症による充血熱ではない熱による煩熱)

52条 嘔家 廱膿有る者は嘔を治すべからず膿尽きれば自ら愈ゆ。金匱吐下1条

吐き気がある者で廱膿が有り膿を吐出する場合は吐き気を止めてはならない膿が無くなれば吐き気は自然に止むのである。 …肺廱で胃気微で逆する(膿痰を吐出)

53条 嘔し而して脈弱 小便復って利し身微熱有り厥を見わす者は治し難し、四逆湯之れを主どる。…心臓衰弱の嘔 金匱吐下14条

吐き気が有って脈弱 それでいて小便は反って良く出て体に微熱があり手足は冷えると言うのは胃気塞がる為の嘔でなく胃気衰微しているのであり身微熱し厥は腎気も衰微し真寒仮熱である、容易に治癒させることは出来ないが陽を救うには四逆湯の主治である。

54条 乾嘔して涎沫を吐し頭痛する者は呉茱萸湯之れを主どる。金匱吐下9条

カラエヅキし生唾を吐き頭痛する場合は脾寒して胃気結し裏気下らず上熱下寒し陰気上衝しているのであるから呉茱萸湯の主治である。

55条 嘔し而して発熱する者は小柴胡湯之れを主どる。金匱吐下15条

嘔して発熱し(手足が冷える場合は)胸膈下少陽に熱結し表気昇せず裏気下らずに因り上熱下寒する者で小柴胡湯の主治である。…陽微結太陽下21条(嘔して津液通じ発熱)嘔は胃気降らざるによる、発熱の表証により胸膈熱を知る、胸膈熱により胃気降らざるによる嘔を知る

56条 傷寒大いに吐し大いに之れを下し極虚し復た汗出を極める者、其の人 外気怫鬱するを以て又之れに水を与え以て其の汗を発し因って噦を得、然る所以の者は胃中寒冷する故也。

傷寒で裏虚により上焦実或いは胃実の類証を起こしている者に誤って大吐或いは大下し甚だしく脾胃を虚せしめ津液を失い熱が鬱滞した者をその上大いに汗を出さしめ津液凅竭して熱の鬱滞激しくポッポッと熱気を噴き暍に似た証を呈した…裏虚外熱、そこで渇に対して水を与え汗を出させて熱を除こうとしたがその為にシャックリが出る様に成ったがそれは重なる誤治に因って胃気を虚せしめそれに水の寒が加わって胃中虚寒し寒気上衝しシャックリを起こしたのである。
…横膈膜筋の痙攣、橘皮乾姜湯、呉茱萸湯。

57条 傷寒 噦し而して腹満するは其の前後を視、何れの部 利せざるかを知り之れを利せば則ち愈ゆ。 金匱噦7条 実邪胃を塞ぐによる病症、前条の虚寒と対比

傷寒で裏気に滞りを生じシャックリが出て腹満するのは胃気の塞がりである、大便小便のどちらに不利があるかを見極め不利する方を利してやれば裏気通じ治癒する、大便不利なら調胃承気湯で大便を利し、小便不利ならば猪苓湯で膀胱の湿熱を利する。
辨霍乱病脈証并治第十三 脾寒格して胃気入れず吐き下し栄衛を亡し傷寒の仮証

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