瘡廱腸廱浸淫病脈証并治第十八

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瘡廱腸廱浸淫病脈証并治第十八 解説

1条 諸浮数の脈は当に発熱するに応ずべし而して反って洒淅悪寒し若し痛む処有れば当に其れ廱を発すべし
…辨脈41条(同文)。師曰く諸の廱腫膿有ると膿無きを知らんと欲せば手を以て腫上を掩い熱する者は膿有りと為す、熱せざる者は膿無しと為す。

総て浮数の脈は発熱しているときの脈であるのに表は反って陽気虚しザワザワと寒気がして若し何処か痛む処があればそこに廱が出来様としている為に栄衛に滞りを生じ悪寒しているのである。総て廱腫に膿が溜まっているか膿が溜まっていないかを確認するには腫上を手で掩ってみてそこに熱が有る場合は膿が有るし熱が無い場合は化膿が無いのである。

2条 腸廱の病たるその身甲錯し腹皮急す、これを按じて濡、腫状の如く腹に積聚無く身に熱無く脈数なるはこれ腸内に膿廱有りと為す、薏苡附子敗醤散これを主どる。

薏苡附子敗醤散の方  (下部の陽気を引き伸ばし水血を和する)宇津木昆台
薏苡仁2.5 附子「二分」0.5 敗醤1.25 苦平熱性のうみを除く腎陽乏しい胃氣塞がれる、八味丸の附子に類する右三味杵づき末と為し方寸匕を取り水二升を以て煎じ半ばを減じ頓服す、小便当に下るべし。

腸廱の病証は全身の皮膚がカサカサ乾いて細かく皺が入り、腹は脹満して腹皮がピンと張っているが押すと柔らかで丁度浮腫みの様で腹中に塊も無く身熱も無いのに脈数である、これは腸癰が潰えて潰瘍を生じ熱膿が除かれず創面が回復しない為の血熱の脈数である、甘薇寒の薏苡仁は瘀水を尿利し津液を通じる、敗醤は排膿、瘀血に近い膿、附子は少陰経脈を鼓舞し津液の流通を高めて創面の汚れを除き肉芽の形成を促進する、膿瘍が潰え結熱が散じて血中に熱が流れた病証であり薏苡附子敗醤散の主治である。

3条 腸廱の者、少腹腫痞しこれを按ずれば即ち痛み淋の如くして小便は自調し時々発熱して自ら汗出で復って悪寒す。その脈遅緊なる者は膿未だ成らず、これを下すべし、当に血脈あるべし*、洪数の者は膿己に成る下すべからざるなり(前条薏苡附子敗醤散)。*大黄牡丹湯これを主どる。

大黄牡丹湯の方
大黄 牡丹 桃仁 瓜子 甘寒熱痰膠結 芒硝
右五味水六升を以て煮て一升を取り滓を去り芒硝を内れ再び煎沸し これを頓服す、 膿あるは当に下すべし、如し膿無きは当に血を下すべし。

腸廱の場合に下腹が腫れてしこりがありそこを押えると膀胱炎の時の様に痛むが小便は普段どおりに出時々熱が出て汗が出再びその後寒気がする…栄衛が巡らない。この場合脈が遅緊の時は結熱して裏気滞るのであるからまだ化膿しきってなく口が開いていない、この場合には下して熱を除くのがよい、便中に血が筋状について出る筈である。脈が洪数の場合は陽過盛で血中に熱溢れるのであるから己に膿みきって崩れているのである、裏気に結は無く下してはならない。遅緊の時は大黄牡丹湯の主治である。

4条 問うて曰く寸口の脈浮微而して渋なるは法当に亡血し若しくは汗出ずべし、設し汗せざる者は何と言うか。答えて曰く若し身に瘡あるは刀斧を被り傷けらるる所亡血する故なり。

撓骨の脈が浮いて微でしかも渋る場合は失血に因るか若しくは汗で津液を失ったかであるが仮に発汗がなくそうなっている場合、若し体に金瘡が有るときは刀か斧で傷つけられ出血が多かったためである。

5条 金瘡病むは王不留行散これを主どる。

王不留行散の方
王不留行 苦平金瘡を治す、棘を抜く、止血 蒴雚細葉 苦寒 骨間の諸痺  膝痛 桑東南根 甘寒津液を益し熱を冷ます  甘草 川椒「蜀椒」辛温腹中を温め 痛みを治す 黄芩 乾姜 芍薬 厚朴
右九味、桑根皮以上の三味は灰に焼く性を存し灰過せしむるなかれ、 各別に杵づき 篩い合わせこれを治めて散と為し方寸匕を服す、小瘡 は即ちこれを粉し大瘡は但こ れを服す産後も亦服すべし、如し風寒 なれば桑の東根はこれを取るなかれ、前の三 物は皆陰乾すること百日。

排膿散の方
枳実 芍薬 桔梗
右三味杵づき散と為し鶏子黄一枚を取り薬散と鶏黄相等しきを以い 揉和し相得せしめ飲に和しこれを服す日に一服す。

口が開いて無い化膿 結熱化膿

排膿湯の方
甘草 桔梗 生姜 大棗
右四味水三升を以て煮て一升を取り温めて五合を服す、日に再服す。

口が開いて膿が出ている化膿性疾患

6条 浸淫瘡口より流れ四肢に向かう者は治すべし四肢より流れ口に入り来る者は治すべからず。

浸淫瘡は黄連粉これを主どる。

浸淫瘡「炎症性湿潤性皮膚疾患」で口周辺に起こり四肢に向かってひろがる者は治癒出きるが四肢に始まり口周辺に向かって広がる場合は治すことができない。陰から陽に入る病は治に向かう、陽より陰に向かう病は治し難い。

【引用・転載の際は河合薬局までご連絡願います】

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