バセドウ病の動悸を改善する漢方薬で不安を取り除く知識と処方例
バセドウ病の動悸を改善する漢方薬で不安を取り除く知識と処方例
あなたは甲状腺機能亢進症のバセドウ病が原因の動悸に不安を感じていませんか?バセドウ病が原因の動悸には運動していないのにドキドキする、急に脈が早くなる等の症状があります。今回はバセドウ病が原因で起こる動悸を改善し不安を取り除くための漢方薬の知識と処方例、さらにバセドウ病の自己抗体TRAb(TSHレセプター抗体)改善に取り組むために免疫を調える体質改善法についてお届けします。
バセドウ病が原因の動悸とは
バセドウ病は甲状腺の働きが活発になり過ぎている状態です。甲状腺ホルモンは車のアクセルの役割をするホルモンです。バセドウ病になるとホルモンが過剰に分泌されアクセルが踏みっぱなしの体になるため、全身でたくさんの燃料を消費して体の機能がスピードアップします。心臓の働きが早くなる頻脈、動悸、息切れなどの症状が起こるのはこのためです。
バセドウ病の動悸 漢方では血熱
私たちは食べ物を体の中で熱エネルギーに変えて体を維持しています。したがって体の中にはいつも熱が充満していますが一方で余分な熱を体の外に取り出してバランスを取っています。
バセドウ病では体の機能が亢進状態になっているため体の中の熱のこもりがいっそう激しくなり、血熱(けつねつ)と呼ぶ血液の熱を体外に十分に取り出す働きが追い付かず、滞った血液と血熱が増して心臓に負担をかけ動悸を起こすと漢方では考えています。
血熱が強いバセドウ病の動悸に柴胡加龍骨牡蛎湯
血熱を取り出せず熱が深くに及ぶと動悸の他にもカッカッと暑くなったりゾクゾク寒気がしたり、顔ばかりが火照ったり上半身の汗が止まらない、イライラや夢にうなされたりなどの神経症状が現れることがあります。
動悸と共にそれらの症状がある場合は柴胡加龍骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)をお試し下さい。
バセドウ病による心身の機能亢進で不眠の悩みを抱えている方におすすめの記事 バセドウ病の不眠を改善する漢方薬の知識と処方 をご覧下さい
心音が聞こえるほどの動悸に炙甘草湯
バセドウ病はホルモンが過剰に分泌されアクセルが踏みっぱなしの体の状態ですからバセドウ病が長引くと心臓や肺の循環力も低下し機能が衰えてきます。そのため脈が結滞したり心音が聞こえるほどの動悸を感じることがあります。
心気を損ない結脉や代脉を現し心音が聞こえる程にドキドキするときは炙甘草湯(しゃかんぞうとう)をお試し下さい。
漢方診療医典 より抜粋
男性のバセドウ病には、炙甘草湯で効かないものもあるが女性の多くの場合は奏功し脈拍も落ち着き甲状腺の腫れも取れ眼球も正常となりすべての状態が好転する。1年から3年は連用するがよい。抜粋ここまで
河合薬局では未だこれほど奏効した事例はありませんが、ご自分の体に合うかどうか、動悸の症状が軽減するか短期間ずつ試しながら飲むことをお勧めします。
バセドウ病が原因の疲れを改善する漢方薬については バセドウ病の疲労感を改善し疲れを減らす漢方薬 を参照
バセドウ病の自己抗体
自己抗体とはあまり聞き慣れないかもしれませんが、自分自身の体内で細菌やウイルスから守るべき抗体が免疫の乱れによって作られ自分自身を攻撃してしまうのが自己抗体です。
バセドウ病は「元気ホルモン」と呼ばれる甲状腺ホルモンが過剰分泌され、常にマラソンをしているかのように、動悸がしたり、汗をかいたり、機能亢進を起こす病気です。
機能亢進の原因は免疫の乱れで、甲状腺表面にある甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHレセプター)を異物として認識してしまい、自己抗体、TSHレセプター抗体(TRAb)を作ってしまうためです。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)が低い場合
甲状腺刺激ホルモン(TSH)が低くても血中の甲状腺ホルモン(FT4,FT3)が高くなります。
これはTSHに代わって、自己抗体TRAbが甲状腺刺激ホルモン受容体と結合し甲状腺ホルモンを分泌するためです。言い換えれば自己抗体(TRAb)がホルモン分泌のスイッチを絶えず押し続けてしまうのです。
バセドウ病を根本解決するために
バセドウ病を治すために甲状腺ホルモン(FT4,FT3)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)を安定させる事は大切ですが、もっと大切なのはバセドウ病の原因になっている自己抗体(TRAb)を下げることです。
自己抗体は免疫の乱れによって発生しますから免疫をしっかり機能させることが自己抗体の減少につながります。
免疫の乱れを整えるレム(LEM)
レム(LEM)とはシイタケ菌糸体培養培地抽出液のことです。免疫力を調整し免疫低下や免疫力過剰、免疫の乱れによって引き起こされる体の不調にお勧めします。
免疫はもって生まれた機能ですがとてもナイーブな働きです。ストレス・寝不足・疲れ・体の冷えによって免疫機能に乱れが生じて自己抗体が生まれやすくなります。
レムを常用することで免疫機構が正しく機能し自己抗体が出来ないような体作り、異物を排除できる体を目指します。
自律神経の乱れとバセドウ病
自律神経を安定させるためにはストレスを解消することが大切です。バセドウ病を治すために大切なのは頑張りすぎないこと。
ストレスのない人はいませんよね。多少のストレスは仕事がはかどったり勉強に身が入るのですが、過度なストレスはマイナスです。
夜は早めに10時から11時に寝るようにしましょう。また深い眠りにつくためにも寝る前にはスマホやテレビ、パソコンは止めましょう。ストレスを解消するためには自分が楽しくなる趣味、おけいこ事、散歩、運動などを生活の中に取り入れ気持ち良く過ごす時間を作りましょう。
相談例 自己抗体が正常値に改善
バセドウ病 50代の男性の相談例です。ご本人が掲載を快諾して下さいました。バセドウ病でお悩みの方の希望になれば幸いです。
約半年前、体調が悪いが原因がわからず、内科、心療内科など病院を転々とし、やっとバセドウ病の診断を受け、3日前からメルカゾールを服用し始めた。当店で以前漢方薬を服用した事があるので、何か併用できる薬がほしいとご来店。主訴は微熱、動悸がする、だるい。仕事も忙しく、ストレスも感じやすいとのこと。
河合薬局で免疫の乱れを改善しバセドウ病の原因である自己抗体を減らす目的と症状を抑えるためLEMと漢方薬をお勧めしました。
初回の検査数値
TSH (甲状腺刺激ホルモン、正常値 0.2~4.5)→ 0.01
TRAb (抗TSHレセプター抗体、 正常値 2.0未満) → 6.9
FT4 (遊離サイロキシン、正常値 0.8~1.6) → 3.25
FT3 (遊離トリヨードサイロニン、正常値 2.2~4.3)→ 9.0
ALT (アラニンアミノトランスフェラーゼ 、正常値 10~42) → 32
AST (アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ正常値 13~30) → 25
2週間後 TSHが改善
TSHが初回に比べ9倍に上昇。これはTRAb(抗TSHレセプター抗体)が下がってきていることが推測され、たいへんよい傾向だと考えられる。ご本人の自覚症状も改善され、動悸はまだあるものの、だるさと微熱は軽減されました。
TSH 0.09
FT4 2.5
FT3 8.4
ALT 31
AST 23
5週間後 肝機能の数値が上昇
生ものは食べていないが、甲状腺治療薬の副作用で肝機能が上昇したのか、動悸はないがだるさはある。メルカゾール1日3錠から2錠に減った。漢方薬は休止しLEMは継続して頂く。
TSH 0.03
FT4 0.92
FT3 3.0
ALT 71
AST 38
2ヶ月後 肝機能が正常値に改善
経過が良いのでメルカゾール1日2錠から1錠に減った。LEMを1日1回1/2袋のを継続。
FT4 0.78
FT3 3.0
ALT 32
AST 25
3ヶ月後 自己抗体のTRAbが正常値に
TSHが正常値より少し高いが FT4、FT3、自己抗体のTRAbは正常値内になりました。お酒を飲む機会があるがほとんど飲まずに過ごし体調も良い。メルカゾールは2日1錠に減薬 、 体調が良いので LEMを継続。
TSH 5.24
TRAb 2.0
FT4 1.01
FT3 2.9
ALT 26
AST 24
5ヶ月後 メルカゾールが7日で2錠の服用に減少
検査値はすべて正常値内に改善。メルカゾールは1週間に2錠に減薬。LEMを継続。
TSH 2.07
TRAb 0.9
FT4 1.13
FT3 3.0
8ヶ月後 バセドウ病が治癒 自己抗体が1/8に減少
検査値はすべて正常値内。
相談当初は通勤の駅の階段を上るのも動悸がして大変だったそうですが、8ヶ月後、検査数値はすべて正常内、自己抗体は初回検査値の8分の1になりました。ドクターから寛解との言葉。メルカゾールなくても良いといわれました。
TSH 3.54
TRAb 0.8
FT4 1.21
FT3 3.4
休日には1,000m級の山にトレッキングできるほど体調が回復しました。ストレスに気を付けながら今もLEMは服用中です。
LEMの服用で バセドウ病の自己抗体が正常値内になり、症状もなくなりました。さらに、今年は花粉の飛散量が多かったのですが、花粉症も薬を服用せずに楽に過ごせました。これもLEMの免疫調整力の賜物だと思います。
まとめ、相談希望の方へ
バセドウ病の症状を抑える治療は大切ですが、一方で自分自身の免疫力を整えることがその先にある完治に向けた取り組みにつながることをお知らせしたいと思います。現在の治療法と河合薬局がお勧めする2段構えの漢方体質改善を併用して自然治癒力を高めバセドウ病の克服に取り組んでみてはいかがでしょうか。お困りの方はご相談下さい。